見えない・見えにくいをカバーする
国連では障害者権利条約が制定され、国内では障害者基本法の改正が実現し、障害者を取り巻く法制上の改善が進んでいます。小学校の教科書に点字や手話が取り上げられたり、車椅子の体験授業が行われたりと、福祉意識を育む教育も盛んになっています。人々の障害者感は確実に変わりつつあります。しかし、障害者の生活は障害者でない人の生活と本当に互角になったのでしょうか?
クロックポジション
見えない・見えにくい人自身や、その人の支援に長く携わってきた人にはおなじみのクロックポジション。ご存じない人にもきっと役立ちますのでご紹介します。
最近はアナログ時計が減り、液晶画面に数字が表示される時計が増えてきました。でもこのクロックポジションとは、アナログ時計の文字版のことなのです。(画像:時計の文字版)向こうが12時、手前が6時、右が3時で左が9時。 見えない・見えにくい人の前に 時計の文字盤があるイメージで、ものの位置を知らせるのが、クロックポジションを利用した方法です。ご飯が6時、味噌汁が9時、サラダが12時、おしるこが3時、そして大事なカツは中心の軸の位置などと説明すれば、見えない・見えにくい人にもテーブルの上のものの位置がわかります。今は全盲でも、見た経験のある人ならおいしいお料理が目に浮かぶことでしょう。
手前と下にご注意
カツとご飯の間にソースの入った小皿が置かれました。あなたなら、見えない・見えにくい人にどう伝えますか?
Aさんは「カツの下にソースがあります」と言いました。クロックポジション的には正しいですね。 Bさんは「カツの手前にソースがあります」といいました。クロックポジション的にはあまりよくありませんね。でも、見えない・見えにくい人が正確に理解できるのはBさんの説明です。Aさんの説明では、皿の上にソースがあり、その上にカツがあるように思えてしまうからです。
「カツとご飯の間にソースの入った小皿が置かれました」と伝えるのがベストなんでしょうね。手前と下の誤りと同じく、向こうと上も勘違いしやすいのでご注意ください。ときには見えない・見えにくい人の手を取って食器に触れてもらうのもいい方法です。
家庭の食卓では
見えない・見えにくい人の最も近い手前の正面にご飯、その右に箸、ご飯の左に汁物、これらの向こうにおかず類というのが右利きの人の食卓の一般的な配置です。これは、右手で箸を取りやすく、左手でこぼれやすい汁物の椀を持ちやすいからです。向こうに置かれる皿や鉢は、手前に背丈の低いもの、向こうに背丈の高いものを並べると、見えない・見えにくい人が食器の位置を手で確認したり、ときには手で持って食べるときに、手前の食器が邪魔になったり食器を倒したりせず便利です。
家庭の食卓では
テーブルのクロックポジションはテーブルをアナログ時計の文自版に見立てましたが、自己中のクロックポジションは自分が時計の中心の軸にいることを想定するものです。これは、対象物が見えない・見えにくい人にとってどの方向にあるかを説明するときに用います。正面が12時、右が3時、真後ろが6時、左が9時です。(画像:文字版の中央に、12時の方を向いて視覚障害者が立っている図)見えない・見えにくい人に道順を説明するようなとき、「12時の方向へ5メートル進み、次に3時の方向へ10メートル進むと、9時の方向に受付があります」などと言います。この説明は、見えない・見えにくい人が初めての場所へ行ったときの道順説明などに有効です。