ピアプレース代表挨拶
視覚障害者支援センター ピアプレース代表
神﨑 好喜
国連では障害者権利条約が制定され、国内では障害者基本法の改正が実現し、障害者を取り巻く法制上の改善が進んでいます。小学校の教科書に点字や手話が取り上げられたり、車椅子の体験授業が行われたりと、福祉意識を育む教育も盛んになっています。人々の障害者感は確実に変わりつつあります。しかし、障害者の生活は障害者でない人の生活と本当に互角になったのでしょうか?
自分自身全盲という障害のある私には、残念ながらやはりそうは思えません。視覚障害(見えない・見えにくいこと)が関係している事件としては、駅のホームから転落してしまい入ってきた電車に引かれて亡くなった全盲者(見えない人)や、教科指導は抜群なのに書類が書けないからと不採用になった弱視者(見えにくい人)など、こうした人々、こうした事件はまだまだたくさんあります。私はこれらの不条理がなくなってこそ、成熟した福視国家と呼べるのだと考えています。ただ不条理の中には、見えない・見えにくいことが正確に認識されていないために起きたこともあるのではないでしょうか。「見えない・見えにくいってどんなことなんだろう?」それが多くの人々に認識されていけば、見えない・見えにくい人の不便や不安、さらには見えない・見えにくくても自力でできることがわかり、支援の必要性や方法も、また支援しなくていいことも理解されて広まっていくと思います。幸い私は小学校6年までわずかながら視力がありました。完全ではないまでも、見えるということ、見えない・見えにくいということの両法の説明ができる全盲です。また盲学校教師として、病気や事故で中途で見えない・見えにくい状態になった人や、見えない・見えにくい状態のお子さんをお持ちのお父さん・お母さんなど多くの人とたくさんのお話を伺、さまざまな苦労や努力を教えていただきました。 多くの小中学校では、見えない・見えにくいことを理解してもらう授業をし、次代を担う子供たちに等身大の視覚障害者を伝える活動もしてきました。
さらに、教え子だけでなく広く視覚障害者の雇用・就労のお手伝いをする活動や、点訳や誘導のボランティア養成の活動を通して、見えない・見えにくいことをなるべく正しく理解していただくポイントみたいなものもわかってきました。そんな私は、現在横浜市神奈川区視覚障害者福祉協会(かな視協)で会長をしています。会員とそのご家族・ご友人など身近な支援者へ、少しでも暮らしが楽になるように、私の経験を伝えられればと思っています。でも、見えない・見えにくい人はかな視協会員だけではありません。支援者も、会員のご家族やご友人だけではありません。きっともっと多くの見えない・見えにくい人が、またその人を支える多くの人が、情報を求めていると思 います。もしかしたら、暮らしやすくなる情報があることすら知らないまま、苦しんでいる人がいるかもしれません。私とかな視協は、そんな多くの見えない・見えにくい人と周辺で支えている人へ、さまざまな情報とサービスを提供し、一緒に幸せになることを考えました。そのために設けたのが視覚障害者支援センターピアプレースであり、ピアプレースが運営する視覚障害者支援サイトがYes-netです。見えない・見えにくい人にとって、またその人を支える人にとって、あるときは道具箱みたいに活用していただき、またあるときは宝石箱みたいに大事にしていただけたら嬉しいです。これからも、繰り返しこのサイトへお越しください。